パン嫌いだった僕がパンを焼く理由

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パンは農産物であるという気づき


先日のブログ「目には見えない発酵世界との出会い」で書いたとおり、農家巡りをしている中で、僕は発酵に関心を持ち始めました。その時、たまたま長野県のパン屋「ルヴァン」さんの天然酵母パンを食べる機会がありました。
「うわ、なんだこりゃ」っていう衝撃。
それまでのパンのイメージって、スーパーや町のパン屋にあるような、添加物がてんこ盛り入ってて、パン生地はフワフワ、パン生地に味はなくて、惣菜やバターの味しかしない印象だった。
それが「ルヴァン」のパンは、固くて、酸味がある。だけど、素材はシンプルで、生地自体に小麦と発酵種の風味がしました。
「そっか。パンって小麦という農産物を、パン酵母たちの力で発酵させて作った食べ物なんだ」と認識できました。だいぶ遅いんですが。この天然酵母パンに出会ったおかげで、それまで嫌いだったパンが好きに変わりました。
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天然酵母という言葉について

ちょっと話は逸れますが、あるパン屋さんが「幾つかの天然酵母パンの本がきっかけで、「天然酵母」という言葉が間違って浸透した」と批判されていました。
確かに「天然酵母」っていう言葉だけが一人歩きして、パン作りをしている人でも、何か誤解してるなぁと感じることが何度かありました。

酵母と一言に言っても、世の中には数え切れないほどの種類の酵母がいて、パンに使用される酵母はサッカロミセス属の中の、セレビシエ種の中のパン酵母です。
市販のイーストに含まれるパン酵母と、果物から起こすパン酵母、野菜から起こすパン酵母。それぞれに違いがあるかというと、当然違いは「無い」わけです。どのパン酵母もサッカロミセス属セレビシエ種のパン酵母なのです。
市販のイーストは、製造工程で工業的に特定の微生物のみを培養させたもので、いわゆる天然酵母と言われるものは、果物や穀物類に付着している酵母や乳酸菌などの、不特定多数の微生物を培養したものと言えます。製造工程で言えば、市販の天然酵母やイーストってブラックボックスなところが多く、よく分からないところがあります。正しく認識するためにも、その製造過程を一度見学したいんですが、企業秘密なのでダメなんでしょうね。

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そして昨今の酵母、酵素ブームがあって、さらに誤解が広がっている感じがします。
「化粧水としても使えて、日焼け予防にも効くし、アトピーやダイエット、アンチエイジングにも効果的。」
って、なんでもアリの謳い文句が書いていたりします。
何っていう酵母?何っていう酵素が働いたら、そんなに万能になるのかなぁ?って思いますが、こういうのが流行っちゃうんですね。
やはり酵母や酵素の基本的な知識は持っておいたほうが良いなと思います。

小麦農家さんたちとの出会い

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さて話を戻して、「パンは小麦という農産物を、パン酵母の力を使って発酵させて作った食べ物」と認識できた僕は、パンを使って小麦生産者を応援できるんじゃないかと思い、オーガニックで小麦を作っている農家さんを探しましたが、なかなか見つかりませんでした。
それもそのはず、日本におけるパン用小麦の自給率は約1~2%程度。ということは、当然98~99%は外国産の小麦。
一方米の自給率は当然100%。生産調整(減反)という制度がなければ、毎年100%を超えます。
パンは、ご飯に次いで第二の主食と言われているのに、その原料をほとんど海外に依存している。お米は有り余ってるし、ポストハーベストや・小麦アレルギーの問題もあるのに、国産小麦の小麦でパンを作ろうという動きはほとんど聞かれませんでした。
なんとか国産小麦、できれば無農薬の全粒粉で、安心して食べてもらえて健康になるようなパンを作りたい。
そう思って引き続き生産者探しをしていると、僕と同じように問題意識をもって、果敢にチャレンジしている奇跡的な人たちに出会えました。それが豊岡のナカツカサファームさん、稲美の岩本農園さん、丹波の太田さん、小野のカエモンさんです。
持続可能な農法で、小麦を育ていている生産者さんたちの話を聞き、なんとかこの方達を応援したいという気持ちになりました。

こうして、僕は生産者を応援する方法として、昔は嫌いだった「パン」を選び、今もパンを焼き続けています。

ナカツカサファーム 中務さん、coboto bakery 酒井

(写真左)ナカツカサファーム 中務さん、(写真右)coboto bakery 酒井

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2016-08-10 | Posted in 生き方・ビジネス・食No Comments » 

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