パンにおける「酵母」について整理してみました

スポンサーリンク

パンにおける「酵母」について整理してみました

はじめに


YouTubeでも酵母についてまとめてみましたので、こちらもどうぞー。
動画URL:https://youtu.be/lyUZBtg1Kwk

先日、堀江貴文さんがTwitterで「遺伝子解析もせずに自然酵母を使ってるクラフトビールとかビオワインとかも危ない。エタノール以外の怪しい副産物を生成してる可能性大。自然酵母パンもそうなんだけどまああれは焼きがはいるので怪しい成分は飛んでるのでまあ平気だろうけど笑。」というTweetをされていました。(2020年3月23日のTweet)
酵母については、お客様からの時々質問されることもあるので、パンにおける酵母についてざっくり整理してみようと思います。

酵母とは

まず、パンとは「小麦、水、塩などの材料を、酵母によって発酵させ、焼いたもの」ですが、その酵母については様々な名前で呼ばれています。イースト、天然酵母、自然酵母、発酵種などなど。その呼び名が多すぎるので、消費者の方にとってはややこしいんですよね。
では、酵母とは一体なんでしょう。

酵母とは「カビ」や「細菌」と並んで、発酵において重要な役割を担う微生物の一種です。
酵母を英訳するとイーストなので、酵母とイーストを区別する人もいますが、別物ではありません。
また酵母は数百種類存在し、いくつかの「属」「種」にカテゴライズされています。その中でもパン酵母やビール酵母などは、「サッカロミケス属(Saccharomyces)」「セレビシエ種(cerevisiae)」に位置付けされます。舌を噛みそうになりそうになりますが、呪文のように何度も口ずさむと覚えられます。サッカロミケス・セレビシエ、サッカロミケス・セレビシエ、サッカロミケス・セレビシエ・・・。

市販の酵母(イースト)ってどういうもの?

市販されている酵母には、ドライイーストや生イーストなどがありますが、これは自然界に存在するパン酵母を純粋培養したものです。
なので、市販されているイーストは人工的に作られたもので、体に悪いものっていう意見は間違いです。

「天然酵母」という言葉が生む誤解


「天然」酵母って聞くと、「人工」酵母っていうものも存在していて、「天然」酵母のほうが体に良さそうっていうイメージ、持ちませんか?
ですが、上記の通り市販のイーストは「人工」酵母ではないですし、いわゆる市販の「天然酵母」における酵母と市販のイーストにおける酵母は、どちらも自然界に存在するサッカロミケス・セレビシエの酵母なので、両者は同じものです。
また酵母菌という表記もよく目にしますが、これは酵母と細菌(乳酸菌や酢酸菌など)をごっちゃにした言葉で、この呼び方も適切じゃないでしょう。

「発酵種」とは

一方「発酵種」とは何かというと、サッカロミケス・セレビシエの酵母以外に、様々な微生物(主には乳酸菌)から成り立っているものをいいます。フランス語で「ルヴァン」と言われるものは、サッカロミケス・セレビシエの酵母と乳酸菌がバランスよく共生している種のことをいいます。そのうち、堅い生地の状態を「ルヴァン・デュール」、液状の状態を「ルヴァン・リキッド」といいます。
なので、発酵種やルヴァンのことを天然酵母や自家製酵母と呼ぶのも、適切じゃないというのが分かると思います。

「発酵種」のメリット、デメリット(危険性)

coboto bakeryでは市販の酵母(イースト)と「発酵種」を併用しています。発酵種における酵母(イースト)と市販の酵母(イースト)は同じものという話をしましたが、じゃあなんでどっちも使ってるの?っていう話ですね。
それはサッカロミケス・セレビシエのパン酵母単体では期待しづらい、乳酸菌による香味成分など、発酵種を使う方が複雑な風味を出せるからです。
また、乳酸菌は小麦に含まれるタンパク質(グルテン)を分解し、旨味成分であるアミノ酸も生み出しますし、それは同時に人間の消化吸収にも一役買ってるすごい存在なんです。

一方「発酵種」のデメリット(危険性)については、発酵学の第一人者である小泉武夫さんもいわゆる天然酵母ブームについて指摘されていますが、花や果実から酵母を自家培養することは、有害な菌かどうかも分からない微生物を身体の中にいれることにもつながるので慎重にしたほうが良いということです。
「発酵種」で大事なのは酵母と乳酸菌がバランスよく共存し、他の微生物に対して優位に立っている状態を保つことなんですね。

参考になる本など

ということで、パンにおける酵母について、ざっくり整理してみましたがどうでしたか?
僕の説明では説明不足のところも多々あると思うので、酵母を考える上で参考になる本などをざっと書いておきますので、ご興味ある方はお読みくださいませ。

『発酵―ミクロの巨人たちの神秘』小泉 武夫さん
『Bon Painへの道~ドンク 仁瓶利夫と考える』仁瓶利夫さん
『パンの世界 基本から最前線まで』志賀 勝栄さん
『ベッカライ・ビオブロートのパン』松崎 太さん
『ル・シュクレクールのパン』岩永 歩さん
『捨てないパン屋』田村陽至さん
『天然酵母表示問題に関する見解』社団法人 日本パン技術研究所所長 井上好文さん

スポンサーリンク
2020-03-26 | Posted in 生き方・ビジネス・食Comments Closed 

関連記事