酵素を知ればパン作りがもっと楽しくなる(酵素ビジネスにおける誤解)
酵素を知ればパン作りがもっと楽しくなる(酵素ビジネスにおける誤解)
はじめに
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動画URL:https://youtu.be/3VBx7Rlw5Nk
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最近、「酵素」に注目していベーカリーのシェフが増えてきました。
また、酵素ドリンクやローフードなど、「酵素」と健康を結びつけるビジネスも展開されています。
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酵素とは一体何か。
酵素がパン作りにどう関わってるのか。
を動画にまとめてみました
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これを知れば目に見えない酵素の世界を知ることができ、パン作りがもっと楽しくなります。
また、酵素の基本的な知識を得ることで、科学的根拠のない酵素ビジネスに惑わされないですむと思います。
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酵素とは
酵母とは以下の動画でお話ししたとおり「単細胞の微生物」です
それに対して酵素は生き物ではなく、一言で言うと「触媒機能を持つタンパク質」です
酵母について(天然酵母という間違い):https://youtu.be/lyUZBtg1Kwk
酵素の特徴
酵素の特徴として、温度によって反応速度が速くなったり、遅くなったりする「最適温度」というものが存在します。極端に温度が高かったり、pHが高かったり低かったりすると、その機能を失うんですが、そのことを「失活」といいます。
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このことから分かるように、一時期流行ってた酵素ドリンクやローフードとかで「生きた酵素を取り入れて、酵素を補給する」って言われてましたが、
そもそも酵素は生き物ではないので、生きた酵素っていうのは間違いですし、酵素を身体に入れたとしても、人間の消化酵素でアミノ酸に分解され、胃酸の強力なpHで失活するので、外部から取り入れた酵素が人間の身体で効果的に働くというのは無い、ということです。
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この辺の説明はネット上でも、農学や薬学の博士号(はくしごう)をとった方が解説されてますので、ご興味ある方は一読された方がいいかと思います。
アミラーゼについて(概要)
バゲットやカンパーニュなど、砂糖が入らないリーンなパンを作る場合、生地に「モルト」を入れると思います。
「モルト」というのは大麦を原料とした加工食品で、水飴状の「モルトシロップ」と粉末状の「モルトパウダー」があります。
ではなぜモルトを入れるかですが、一番の目的としては酵母の発酵を助けるというものです。
酵母というのは糖類を食べて、炭酸ガスとアルコールを発生させる。なので、パンが膨らんで風味が良くなるんですよね。だけど、バゲットやカンパーニュ生地には酵母のエサとなる糖類が無い。
じゃあどうするか?
先ほど、甘酒の例で、デンプンというのは多糖類といって、ブドウ糖の塊だと言いました。このデンプンを分解しちゃえば、酵母のエサである糖類をいっぱい生み出してくれる。ということです。
アミラーゼについて(詳細)
小麦中のデンプン、多糖類の状態では酵母が食べられない。そこで、モルトがもつ酵素「αアミラーゼ」っていうのはデンプンを分解する酵素なので、デキストリンという状態にチョキチョキと切り取る。
ですが、デキストリンという状態でも酵母は食べられないので、さらに分解する必要がある。
そこで小麦中には、「βアミラーゼ」という酵素が多く含まれているので、その酵素の力でデキストリンを麦芽糖という二糖類の状態にまで分解する。言葉で分かるかと思いますが、ブドウ糖が二個結合している状態です。
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二糖類の状態になると、ようやく酵母が食べられるので、麦芽糖を体内に取り込んで、酵母中の酵素の力でブドウ糖(単糖類)に分解する。
そうすることで、酵母がブドウ糖を取り込んで、炭酸ガスとアルコールを発生させる。つまり、アルコール発酵することができると。
菓子パン生地の場合
菓子パン生地などには、どうなっているか。
そういう生地には、砂糖が入ってると思います。で、砂糖の主成分であるショ糖は二糖類に該当する。
で、酵母の持つ、インベルターゼという酵素はこのショ糖を単糖類であるブドウ糖と果糖に分解するので、酵母がそれを取り込んで発酵するという訳ですね。
プロテアーゼについて
アミラーゼはデンプン分解酵素でしたが、このプロテアーゼはタンパク質分解酵素です。
ちなみに、先ほどのデンプンはブドウ糖の集合体でしたが、タンパク質はアミノ酸の集合体になります。
タンパク質が分解されたら、グルテンが溶けてしまってダメやんって思うかもしれませんが、健全な小麦粉であればプロテアーゼの量は少なくて問題にはならない。
プロテアーゼの効果
プロテアーゼの効果としては、
1:グルテンがほどよく分解されて、生地の伸展性がアップすること
2:タンパク質が分解されて、アミノ酸が生成されるため、旨味がアップする
3:アミノ酸と糖が結合されることで起こるメイラード反応を引き起こし、パンの風味がアップする
プロテアーゼが問題になる場面
プロテアーゼが問題になるのは、小麦が穂発芽した場合です。穂発芽というのは、小麦が収穫直前で雨に当たって、穂についた状態のまま小麦が発芽してしまうこと。
こうなると、芽が育つエネルギーを得ようとして、小麦中のタンパク質をバンバン分解しちゃう。
そういう小麦だと、いくらミキシングしてもグルテンが繋がらず、パンが出来ないんですよね。
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日本の梅雨時期6月〜7月頃ですが、ちょうどその時期は小麦の収穫時期とかぶるんですよ。
なので、日本の小麦生産者さんって、収穫時期をいつにするかってことが、悩みの種なわけです。
梅雨に入る前に収穫しちゃうと未熟な小麦で品質が良くないと。かといって、梅雨に入っちゃうと、穂発芽を起こしてパンに使えないっていう。
プロテアーゼと乳酸菌の関係
小麦だけじゃなくて、乳酸菌もプロテアーゼを持っているので、小麦中のタンパク質を分解してアミノ酸を生成することができます。
パン生地中に乳酸菌を増やそうと思ったら、発酵種、いわゆるルヴァンを入れます。そうすることで乳酸菌の酵素の力で、より多くのタンパク質が分解され、旨味成分のアミノ酸ができるし、消化吸収も良くなると。
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ただ、ルヴァンの量が多すぎると、先ほどの穂発芽の例のように、グルテンが溶けすぎちゃう。なので、窯伸びはしないし、クープのエッジも立たないということが起きます。