湯種作りのコツ(糊化の仕組みについて)

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湯種作りのコツ(糊化の仕組みについて)

はじめに



動画URL:https://youtu.be/igX5poymOvo

湯種法は比較的新しい製パン手法ですが、その原理は小麦の基本的性質の「糊化」を利用したものです。
この糊化について理解を深めれば、パン生地の吸水率を高めて、より美味しく、より新鮮さを長持ちさせることができますよ。

また「糊化」はパン作りのほか、お菓子作りにも関係してくるので、絶対知っておいた方がいいと思います。昔、カスタードの炊き方のコツと糊化の仕組みがリンクした時は、「おぉ、そういうことかっ!」とめちゃくちゃ納得しました。

湯種はもちろんご家庭でも簡単に作れますので、今回の動画で湯種作りのコツを学び、是非ご家庭でも高加水のパン作りを楽しんでくださいね。

糊化とは

糊化とは、デンプンに水と熱を加えることで,デンプンが糊状になることです。小麦粉に水を加えて加熱すると、50度前後から粘りが出て約95度でピークを迎えて、完全に糊化(別名α化)する。
その後も加熱を続けるとブレークダウンという現象が起きて、粘度が下がりコシが切れるようになります。この糊化の性質を理解すると、カスタードクリームの作り方のコツが分かりやすくなるかなと。
カスタードって「粘り気が強くなってきたところで火を止めず、コシが切れるまで炊け」って言われると思います。これは、つまりブレークダウン現象が起きるまで炊けってことですね。

糊化の仕組み

この仕組みがわかると、この後の湯種のメリットが理解しやすくなると思います。
酵素の動画内でも話しました、製粉時に損傷してない「健全デンプン」っていうのは、規則的な結晶構造を成しているので、水が入り込んだり、酵素の影響を受けないんですね。
ですが、水と熱が加わると、その結晶構造が壊れます。
そうなると、水の分子がデンプン粉に入り込んだり、アミラーゼという分解酵素の影響も受けやすくなるというわけです。これが糊化の仕組みです。

糊化の速さ

糊化の速さは、デンプンと水の割合によって変わる。
水の割合が多いほど、低い温度で糊化が始まり、水の割合が少ないと高い温度で加熱しないと糊化が始まらない。
なので、小麦デンプンを早く十分に糊化させたいなら、水の割合を増やせばいいということ

湯種法とは

湯種とは、小麦粉と熱湯を混ぜて、小麦デンプンを糊化させたもので、その湯種を使った製法を湯種法という
湯種って生地がもちもちになるので、もちもち感が好きな日本独自の製法かなと思うかもしれませんが、ヨーロッパでは昔から取り入れられていたそうです。
一般的には、小麦粉総量の10~20%を湯種にして、残り80~90%の本ごね用の小麦粉と一緒にミキシングします。
ネットの記述では湯種は小麦粉と熱湯を同量で混ぜると言われてますが、多分同量だと滑らかに混ざらないので、小麦粉に対して倍量以上の熱湯を混ぜるほうがベター。

湯種法の メリット

1:(吸水性の増加):糊化の仕組みで解説した通り、事前に糊化させることで、デンプンの結晶構造が壊れ、水が取り込みやすくなる。で、水和が進み、生地の吸水性を増加させることができます。
うちのパンでも、水のBPが110%くらいのものがありますが、これは湯種法を使ってるからできるんですね。湯種を使わず、吸水率100%を超えてたら、ドロドロの生地で成形できないですね

2:(老化速度が遅くなる):生地の吸水性が上がると、パンの老化速度も遅くなるので、より長く保水性を維持し、パンの老化が遅くなる

3:(甘味がアップする)湯種を作るとアミラーゼという酵素の影響を受けやすくなり、パン生地中に糖類が増え、甘味が増す。詳しい説明は、前回の酵素の動画を参照してください

湯種法のデメリット

1(製パン性の低下):小麦を熱湯と混ぜ合わせることで、小麦中のタンパク質の機能が失われます。これを熱変性という。
この変性が起こることで、グルテンが繋がりにくくなり、ミキシング時間が通常よりも長くなります。
さきほどの加水110%の生地だと、合計20分くらい捏ねてようやく生地が繋がる感じです。

2(ケービングが起きる):湯種中のタンパク質はグルテンを形成しづらくなるので、クラストがもろくなって、ケービング(又はケーブイン)つまり腰折れを起こしやすくなります。

3(ボリュームの低下):ケービングと同じで、グルテンが繋がらないことから、パンのボリュームも低下してしまいます。

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2023-05-02 | Posted in 生き方・ビジネス・食Comments Closed 

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